ペンタックス 一眼レフ MZ-3を語る(005)

趣味として写真を撮り始めたのは、小銭の使い道のなかった2000年の新年早々からなので、丸2年以上になります。その時から中心に撮っているのは風景写真。旅行が好きで、ヨーロッパや南の島では、残しておきたい風景をよく目にしますから、ぴったりの新しい趣味でした。旅行に行かなくても天気のいい日などに、何気ない街の風景や夜景を撮ったりしています。失敗している写真の方が圧倒的に多いのですが、1枚でも上手く撮れている写真があれば、とても嬉しい気分になれます。撮る瞬間には、ファインダーの中に没頭することもできますから、いい気分転換にもなります。そんな私のカメラライフを支えているのが、ペンタックス(PENTAX)の35mm一眼レフ「MZ-3」です。コンパクトカメラや使い捨てカメラから、レベルアップしたい人に最適の一台だと思います。今まで使ってきた経験を以下にまとめます。一眼レフの世界に踏み出そうとしている人の助けになれれば幸いです。

最大の特徴 小型軽量ボディ

最大の特徴は、一眼レフカメラの中で、群を抜いて小型軽量なことです。ボディ重量が約425gであり、他の一眼レフカメラの重量は600g前後~1kg超ですから、軽量であることを十分に実感できます。女性にはとても扱いやすい大きさで、男性だと小さ過ぎるかもしれません。

この小型軽量を活かせる場面は数多くあり、機動性にとても優れているので、どこへでも持って行けますし、手軽にシャッターを切れます。カメラの大きさ・重さに対して不安にならなくなり、行動範囲を確実に広げてくれます。

写真:MZ-3 小型軽量を誇るMZ-3

ですが、良いことばかりではありません。この小型軽量という特徴は、画質を落とす原因になります。手ブレを起こしやすいですし、レンズに対してボディが軽量過ぎて、バランスが悪くなり、撮影時の安定感を確保できない恐れもあります。画質を追求するなら、できるだけ三脚を使用することが望ましいです。オプションのバッテリーパックを使用して、小ささと重量不足をカバーする方法もよく聞きます。

利点と欠点の両面がある小型軽量という特徴ですが、重さ、大きさは他の方法で補うことができますが、他のカメラは自重よりも軽くなることはできません。やはり立派な長所と言えるでしょう。

写真の魅力に引きこまれるシンプルなカメラ

良くも悪くも非常にシンプルなカメラです。このカメラには、入門機に見られる「~モード」と呼ばれる機能セットは一つも装備していません。基本的には、撮影者が撮影環境を考慮して、絞り、シャッタースピード、ピント等を調整して撮影することになります。MZ-3のターゲットユーザは中級者です。

では、初心者では扱えないのかというとそうでもありません。「そこそこ使える」AF(オートフォーカス)、AE(自動露光)を持っているので、カメラ任せにしても満足できる写真が撮れます。そのうち使い慣れてくると、各種設定が簡単かつ自由自在に調整できることに気付き、いろいろと条件を変えた撮影を自然と楽しめるようになります。余計な機能が無いおかげで、最低限の操作ボタン・ダイヤルしかありません。ですから、各操作が簡単で覚えやすく、手軽に設定変更を繰り返すことで、良い写真と悪い写真の違いを容易に体感させてもらえます。

美しい写真が撮れれば嬉しく、意図しない失敗した写真になってしまったらガッカリするでしょうが、どちらも次回の撮影に向けて気合が入ることにはかわりはありません。そういう経験を積み重ねていくうちに、MZ-3が写真の魅力を次々と教えてくれていることが分かってくると思います。

性能は普通。だが操作系は優れる。

写真:操作はアナログダイヤル。液晶は枚数等の表示。 操作は全てアナログダイヤルで。液晶は残り枚数等の限られた表示をする。

前述に「そこそこ使える」という表現を使いましたが、AF、AEなどの各機能の性能面で、特に優れたものはありません。平均的な性能をコンパクトに収めているカメラと言えます。シャッタースピードは生意気にも最速1/4000秒と高速なのですが、内臓ストロボを使うとシャッターの構造上の限界から1/125秒までになってしまうのが、けっこう中途半端です。

直接、性能には関る要素ではないかもしれませんが、操作系は非常に優れています。ほぼ全ての設定をアナログダイヤルで入力するので、非常に簡単で分りやすく設定を行え、液晶画面で設定値の確認をする必要もありません。

使っていて気になるのはAF動作の悪さです。数個の物体が重なり合っている場合などでは、一発でピントが合うことはまずありません。必ずと言っていいほど、AFが数往復分迷います。風景中心に撮影するのならあまり実害を受けませんが、スポーツなど瞬間の美を追い求めるには不向きです。機動力抜群のMZ-3なだけに、AFのイマイチさが残念なところです。

また、AEは一般的な一眼レフ同様、露光オーバー気味になりやすいです。特に、少しでも被写体が暗いと過剰に露光を調整する傾向があるため、プリントが全体的に白っぽくなったり、手ブレが起きやすくなったりしますので、そういう場合には、露光補正をマイナス1前後(フィルム等条件によって異なる)で使います。

ステップアップも心配なし!?

写真の腕が上達してくると、より高機能なカメラにステップアップしたくなるのが、人情というものです。Canon Eos-1、Nikon F5といった最上位機種を視野に入れるようになるでしょう。しかし、ステップアップすると今まで使用していたカメラの使い道が無くなります。一眼レフカメラは決して安いものではありませんから、無駄にしたくないというのもまた人情と言えます。

写真:ドライボックスで保管する 保管庫はドライボックスでもOK。
湿気からカメラを守るのは基本。

そんな時にも、MZ-3ならば使い道は残されています。最上位機種は重量も最上位で、すごく重く大きいのですが、軽量を誇るMZ-3なら、手軽に撮りたいスナップ撮影の時などに活躍できる余地があります。生粋のセカンドカメラと言うこともできるでしょう。

さらに理想を言えば、ペンタックスにEos-1やF5と同クラスの最上位機種があれば、レンズもそのまま使えて何も文句は無いのですが、MZ-3の上位機種MZ-Sでは、MZ-3と比べて総合的に大差がありません。ステップアップの対象にはなりにくいでしょう。ステップアップするには、レンズマウントが違う他メーカーの最上位機種とともに、新たにレンズも買い揃えなくてはならないのがお財布に痛いところです。しかし、最上位カメラの故障などのもしもの時にも、使い慣れたMZ-3が無駄にはならずに手元に残っているという安心感を持ち続けることができます。

上達したい初心者には絶好の一台!

以上の特徴から、これから写真撮影を生涯の趣味として楽しもうと考えている方にとって、最適な一眼レフカメラの一つには間違いなく入るでしょう。小型軽量と扱いやすさが、このカメラの最たる特徴であり、入門者から中級者までの層で使える、ステップアップを約束してくれる十分な実力を持つ35mm一眼レフカメラです。

追記

【2008.01.31 追記】
最近はMZ-3を使う機会がなくなってしまいましたが、大事に保管しています。フィルムの味が必要な仕事がくれば、変わらず活躍してくれるでしょう。

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