サーバに適した省電力型PCを自作する(009)

メーカー製PCも格安になってきていますが、特徴あるPCが必要なら、やはり自作するしかありません。最近の自作のトレンドは、静穏性や省電力性を求める方向へも向かっています。この2つの方向性は共通するところも多く、工夫次第では両方が良いバランスのPCを組み上げることも可能ですが、それなりの経験が必要だと思います。残念なことに私には、静穏性と省電力性を両立させられるほどの技量はありませんが、省電力性についてだけなら、自信作と誇れる1台を自作しました。この省電力PCは自宅サーバを運営するのに非常に役立っています。日々、最新のパーツが産み出されるため、各パーツの具体的な紹介はあまりしていませんが、自作に対する一つの考え方として、参考にしてもらえれば幸いです。

省電力化はパーツ選び(調査・計画)で決まる

低消費電力を目指すには、全てがパーツ選びで決まります(断言!)。パーツ購入前の調査と計画が、結果を決めてしまいます。しっかりと計画されたパーツ構成と、しつこいほど入念な店頭またはパーツ専門店サイト等の事前調査が欠かせません。価格.comを利用すると効率良く情報が得られます。珍しいパーツまでも紹介されている上、最も大事な最安値を簡単に知ることができます。パーツごとの掲示板も大変参考になります。PC-サクセスなどお買い得商品が豊富なショップに目を通すのも必要です。こういうショップはネットも良いですが、秋葉原のお店にも掘り出し物が時々ありますから油断ができません。

そして、省電力性を求めるには、大きな2つのポイントがあります。1つは、消費電力の少ないパーツを選ぶこと。ほぼ同性能のCPUであっても、メーカーや形式が違えば消費電力は変わります。それぞれのパーツにおいて、できるだけ電力消費量の少ないものを選定するのは、省電力化の一番の基本です。

もう1つは、PC構成全体としての消費電力を抑えることです。言い換えれば、PCから極限まで無駄を省くということになります。各パーツが優れた省電力性を持っていたとしても、パーツが山ほど付いていたのでは、PC全体として低消費電力を達成できません。必要最低限のスリムなPCのみが、省電力性を発揮できると考えて下さい。

省電力性能を求めるならVIA製C3

写真:C3の外見 低消費電力、低発熱のクリーンなCPU。

PCの性能を決める最も重要なパーツは、言わずと知れたCPUでしょう。このCPUは、低消費電力を目指すのにも、最重要なパーツと言えます。なぜなら、PC全体の消費電力に占めるCPUの消費電力は、約40%と最も大きな割合を示すからです。

通常使用されるIntel製、AMD製のCPU単体の消費電力は、約50~80W(ワット)のものがほとんどです。これは蛍光灯の照明と同等の消費電力となります。5cm四方のチップ一つに使う電力として考えると、想像以上に多いものではないでしょうか。

このCPUの消費電力を抑えることが、超省電力型PCを完成させる近道です。私も使用した省電力性に特化したCPUがあるのでご紹介します。

チップメーカーとして有名なVIA製のC3というCPUです。あまり目にしないCPUではありますが、低消費電力と、それに付随する低発熱性には優れた評価を与えられています。消費電力は約5~12Wなので、Intel等他メーカー製CPUと比べると、消費電力が最大90%カットという驚異的な省電力性と低発熱性を発揮しています。発熱も少ないので、CPUファンがなくてもヒートシンクのみで長時間、安心して動作させることができます(実行は自己責任でお願いします)。低消費電力第一で考えるなら、C3は外せない選択肢になるでしょう。

もちろん良いことばかりではなく、低消費電力、低発熱性を達成する代わりに犠牲にしているのが、CPUとしての性能です。特に浮動小数点演算が必要な画像処理、動画処理ソフトの動作が著しく低速なのが知られています。ですが、浮動小数点演算が重要でないビジネスアプリケーション(Word、Excel等)では同クロックのCeleronと同等の性能はあると報告しているサイトもあります(ちょっと古いですが「インプレスAKIBA PC Hotline! HotHot REVIEW 2001年5月18日 第108回より」)。

性能をとるか、消費電力をとるか。自作の醍醐味を味あわせてくれるのが、このCPU選定なのです。

数多くの仕事ができるマザーボードを選ぶ

省電力性において、CPUと同じくらい重要なのがマザーボードです。できるだけ多くの仕事をしてくれるマザーボードを選ぶと、消費電力を抑えることが簡単になります。マザーボード単品の消費電力としては、おおよそ20~40Wの間にあり、製品ごとの大きな差はないようです。

CPUがする演算以外の主要なPCに必要な機能としては、グラフィック出力、サウンド出入力、ネットワーク通信、プリンタ出力、PS/2やUSBなどのデバイス出入力、メモリ・HDD・外部ドライブなどの記憶装置などが挙げられます。この中から、マザーボードにできる仕事があるならさせてしまった方が、パーツ総数の節約になり省電力化に近づけるのです。

写真:ケースに組込んだM/B

実際には、記憶装置であるメモリ・HDD・外部ドライブ以外の仕事なら、マザーボードに任せることができます。その中でも、C3と相性が良いVIA製のチップセットを多く採用しているGIGABYTE製のマザーボードが良いと思います。製品としてはMicroATX規格のGA-6VEMLなら、C3との実績も多くあり、主な出入力関係は、グラフィック×1、プリンタ×1、PCI×3、LAN×1、USB×2などで一通り揃えています。この様なマザーボードは、他メーカーでも数多くあるので、根気よく探してみて下さい。

なんでもできるマザーボードもやはり、性能を犠牲にしています。マザーボードの出入力関係の性能は、オマケ程度で最低限のものも多いです。性能を求めるなら、グラフィック出力は、専門家であるグラフィックボードに任せるのが本道なのです。その他の機能も同じことがいえます。

性能をとるか、消費電力をとるか。ここでもCPUと同じ選択に迫られます。割り切りと決断が重要です。

メモリはチップ数をより少なく

写真:C3の外見 SDRAMメモリモジュール256MB。黒いの1つが16MBチップ×16個。32MB×8個構成だとより省電力

メモリは予算が許す限り、できるだけ大容量のものを使用したいところですが、省電力を追求するなら、短絡的に大容量メモリを選べません。メモリの消費電力は、メモリモジュールについているチップの数で決まります。よりチップ数が少ない方が、消費電力も抑えられるのです。

例えば、同じPC133CL3 128MBのメモリであっても、8MBのチップ16個で構成されると約7.5W、16MBのチップ8個で構成されると約5Wとなり、チップ数の少ないものは2/3ぐらいの消費電力で済みます。

自作省電力PCの消費電力実績

以上のポイントを押さえて自作したパソコンの実績データを紹介します。しかし、保証はできませんので、あくまで参考程度にご覧下さい。

ケース ノンブランド 電源ユニット付属(250W)
マザーボード GIGABYTE製 GA-6VEML(Micro ATX)
CPU VIA製 C3 866MHz(Ezra)
Memory 中古品 ノンブランド 128MB SDRAM
HDD SEAGATE製 ST340810A (40GB 5400rpm)
通常消費電力 25W(実測値:ノートPC並み!)

実際にサーバーとして使用しているので、あまり使わないFDDとCD-ROMドライブは取り外してあります。PC本体のみの消費電力であって、ディスプレイなどは含んでいません。

測定風景の写真のように、クランプメータを使用して測定しました。数値はアンペア数なので、100Vをかけて25Wになります。他のノートPCを測定したところ、約20WでしたのでノートPC並みであるといえると思います。なかなかの好結果が出て、私はホントに嬉しいです。

省電力マシンは自宅サーバーに最適!

最も適している用途は、自宅サーバーとして使用することでしょう。サーバーは24時間連続運転していなければなりませんが、高性能な計算能力やグラフィック性能は必要ないですし、消費電力が少ないので、電気代=維持費も低く抑えることが出来ます。省電力PCの長所を活かし、短所を消し去る使用方法は、自宅サーバーが最適です。

家庭での月当たりの総消費電力が120~300kWの間にある(第2段階)として算出した例です。式中、1000で割っているのは、電気料金がキロワット単位に課金されるためです。

省電力PCの場合 25W(ワット)×24時間×30日÷1000×20.67円=372円
一般的PCの場合 100W×24時間×30日÷1000×20.67円=1488円

なんと24時間フル稼働でも月額400円以下で済んでしまいます!この差は年間だと13392円になります。一年で一万円以上の差が生じるなら、自作して省電力サーバーを組み立てる価値は十分にあるのではないでしょうか。

それ以外の用途としては、入門者向けのインターネット専用機などが考えられますが、その程度ならば、BTO注文ができるネットPC販売サービスを利用する方がよいでしょう。予算的な面だけでなく、自作PCを組み立てるための労力や保証の有無などと比べると、BTO注文したほうが安く早く安心できる性能の良いPCを手に入れることができますので、そちらをオススメします。

組立の参考になるサイト

自作PC組立方法を詳しく写真入りで説明しているサイトを紹介します。MYCOM PCWEBの「自作PC組み立て講座」です。

自作方法は、今も昔もあまり変わるものではないのですが、このサイトでは各パーツを最新のものに定期的に変更したりして、タイミングよく知りたい情報をしっかりと伝えてくれます。各説明はそれぞれ配慮がなされていて、写真もあるので、あまり迷うことがありません。

また、自作PCの消費電力を検討するのに便利なのが「takaman's PC talks 自作パソコン生活におけるトラブルの予防と解決」です。このサイトの「電源電卓」は、パーツ数は限られていますが、電圧別に消費電力を計算してくれ、PCの電源の実態がつかみやすいです。

これらのサイトは、自作を目指す人たちに大きな助けになることでしょう。また、なかなか自作する勇気が持てない人は、このようなサイトを見てよく調べて自信を持つことから始めてみましょう。PCの自作なんて、プラモデルの組立より簡単だと思いますよ。

【2007.08.16追記】
2代目WEBサーバ構築についてのレポート「続・自宅サーバに適した省電力型PCを自作する方法(044)」を公開しました。こちらもご参照ください。

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